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ソウル 日本へのラブレター

2012年09月11日

 時々行くチヂミの店に看板娘がいる。笑顔で働く姿に若干、悩ましい気分になる。彼女は東日本大震災の後、東京での留学生活を断念してソウルに戻った。余震が怖く、親も心配した。この1年余、夢半ばで日本から帰国したとの話をよく耳にした。

 そんな中で、久々に逆方向の話を聞いた。高校生の日本語スピーチ大会。ある男子生徒は中学のころ、日本のアニメに夢中になった。勉強がおろそかになり成績も落ち、親を心配させた。

 いつしかアニメの日本語が耳になじんだ。日本語の勉強を始め、上達すると周囲は高く評価した。彼は「日本語で自信が生まれ、努力する自分に変わった」と語った。今の夢は日本に行き、大学に入ること。今回は日本大使館公報文化院が主催、韓国で初の全国規模の大会だった。彼は大舞台で自信を深めたはずだ。

 別の生徒は東日本大震災後、街頭で支援募金活動をし「親日派」とやゆされたと明かした。反日感情が残るそんな韓国で日本語を学び、懸命に話す彼らの姿に拍手を送った。

 ある生徒は「日本の映画でげた箱にラブレターを入れる場面がロマンチック」と語った。韓国の学校にげた箱がないからだという。「実際にもらえる生徒は多くない」と教えようか迷ったが、日本への夢を壊すのはやめた。

(辻渕智之)

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