2012年09月10日
その日は深夜まで、お祝いのクラクションを鳴らす車がトリポリ中心部にあふれ、無数の花火が上がった。
カダフィ政権の崩壊後、初めて実施されたリビアの議会選。「アラブの春」で長期政権が倒れた国々の選挙を取材してきたが、人々の興奮ぶりは一番だろう。42年間に及んだ独裁からの解放感が、街を包んでいた。
一握りの人々が政治や経済を牛耳っていたカダフィ時代、選挙も憲法もなく、大半の国民は投票の経験が初めてだ。「自分たちの手でリーダーを選ぶ。生きている間、こんな日が来ると思わなかった」と男性教諭(35)。
反カダフィ派の元兵士(30)は「選挙はテレビで外国の様子を見るだけだった。帰ったら子供に自慢するよ」。
ラジオ局のディレクター(48)は「カダフィ時代の『テロリストの国』といった、国際社会の悪いイメージを変えたい。周辺国にも平和をもたらす国にするのが夢だ」と語った。
昨年10月、内戦の末期に訪れた際は、トリポリは武装した反カダフィ派の兵士であふれていた。人々は数カ月で、政党や選挙の意味を理解したようだ。
治安悪化や地域対立など課題は多い。だが、石油資源が豊富で、地中海に面して古代遺跡が多く、観光面も将来性がありそうだ。
次に訪れた時は、どんな発展を見せているだろうか。
(今村実)