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花蓮 八十八カ所恩讐超え

2012年10月03日

 台湾東部・花蓮への出張の帰り、飛行機の待ち時間、日本統治時代に建てられた寺「慶修院」を訪ねた。小さな公園風で、山門を入ると左手に手水舎、その先の右手に本殿。その先に池があり、さらに売店。日本統治時代に建てられたというが新しい。それもそのはず2003年に改修され観光スポットになっている。

 売店で案内書をと思ったが飲み物や食べ物ばかり。係員が「ホームページを見てください」。後でネット検索すると、慶修院は大正年間、四国の吉野川付近から移民してきた人たちが建てた真言宗高野派の「吉野布教所」が前身。一帯は今は吉安郷だが、当時は吉野村と称した。

 吉野村の人たちはこの辺りでは最初の移民だそうで、先住の原住民との争いもあったという。布教所は集会所であり、診療所でもあり、村の中心だった。移民たちは時に布教所に避難し、肩を寄せ合って暮らしていたのだろう。苦難の歴史がしのばれる。

 だが、慶修院を再建したのは実は台湾の人たちというし、境内には四国八十八カ所霊場の石仏も一番の霊山寺釈迦(りょうぜんじしゃか)如来から八十八番大窪寺の薬師如来までズラリと並んでおり、先祖は敵対したはずの地元の人が花を供えている。恩讐(おんしゅう)を超え、そこここに線香の煙がのどかに漂っていた。

  (迫田勝敏)

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