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バージニア 銃社会に撃たれて・・・

2012年10月23日

 日本ではあり得ない空間だった。先日、米南部バージニア州で開かれた銃の即売会を取材した。首都ワシントンから車で約1時間。小中学校の体育館の10倍程度の広さの展示場には、数え切れない拳銃やライフルが陳列されていた。

 即売会は大にぎわいで、小さな子供を連れた家族も珍しくなかった。入場者は釣りざおを買ったかのようにライフルを肩に掛けて会場を後にする。弾丸のパックを買い込む様子は、量販店で飲み物をまとめ買いするのと何ら変わらない。

 即売会の主催会社を経営する40代の女性が、出店していたガンショップを次々に案内してくれた。女性は父親の後を継ぎ、米国内の七州を回って即売会を開いている。初めて銃を撃ったのは、7歳の時だったという。

 コロラド州の映画館で12人が犠牲になった銃乱射事件については「悪いのは銃ではなく、犯罪者よ」。いろんな銃や店主をうれしそうに紹介してくれる早口には「銃への愛」がこもっていた。

 「メリーランド州に住んでいるの?ガンショップを紹介するわよ」。帰り際に持ち掛けられた。明るく、軽いノリで。外国人でも銃を買えるのかどうかを突き詰める必要はなかった。「今のところ要らないです」と断った時だけは、陽気な彼女の横顔が寂しげに見えた。

(竹内洋一)