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ザルカ 祖国愛黙ってられぬ

2012年10月22日

 内戦状態にあるシリアから逃れてきた反政府活動家を取材するため、隣国ヨルダン中部ザルカを訪ねた。待ち受けていたのは、祖国再生に向けたシリア人の思いだった。

 活動家へのインタビューを始めようとすると、見知らぬ人たちがぽつりぽつりと部屋に入ってきた。その都度、全員と握手を交わす。これが何度か繰り返され、当事者以外に見学者が4人に。

 活動家に質問したのに、見学者が方々から発言する。通訳者がすべての発言を訳すため「まずは彼(活動家)の発言を教えて」と軌道修正することもしばしば。気が付くと全員が口角泡を飛ばしていた。活動家の発言を機にシリアの戦況や将来像など意見をぶつけ合っているのだ。通訳者も通訳そっちのけだ。

 どうにか取材を終えると1人の見学者がやって来て「日本人と日本政府に伝えてほしいことがある」と懇願してきた。シリアからの避難民で政府軍に銃撃されて左脚を負傷したムハンマドさん(30)。活動家の知人という。

 ムハンマドさんは「祖国は内戦ですべて破壊された。アサド政権崩壊後、祖国を立て直すには医療や教育などの民生分野で日本の支援が必要だ。われわれシリア人を助けてほしい」と訴え、両手を強く握ってきた。痛かったが、彼の思いが十分に伝わってきた。

(寺岡秀樹)