2012年10月11日
この夏は毎晩、カイロのアパート7階にある自宅に帰るのにやや勇気がいる。エジプトは連日、停電が頻発。エレベーターがいつ止まり、中に閉じ込められるか分からない。
夜遅くまでだんらんを楽しむラマダン(断食月)が、冷房を使う夏場と重なるなど種々の要因が絡んだためらしい。地下鉄や証券取引所まで停止した。
庶民の不満の矛先は、就任したばかりのモルシ大統領に。旧ムバラク政権が長年、電力インフラの整備を怠ったのが根本的な原因だろうが、大統領は陳謝する羽目になった。
カンディール首相は、「家族は1つの部屋で過ごしてほしい」と、国民に呼び掛け。一世帯当たりのエアコン使用台数を減らすように、というわけだ。「暑さをしのぐには木綿の服が好ましい」との助言には苦笑した。
ただ、ユーモア好きの国民は不便も笑いに変えるのが得意だ。インターネットは「停電の楽しみ方」を競う書き込みがあふれる。
「ロウソクの明かりなら夫婦がロマンチックな雰囲気に戻れる」「汗をかけば居ながらにしてダイエットになる」「どの家も電気が消えれば、空き巣が留守宅を確認できず犯罪が減る」など。
そういえば、エアコンのないうだるような暑さで飲むビールの味は、格別だ。これも、「停電の功名」というべきか。(今村実)