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香港 市井では交わす友情

2012年11月01日

 香港国際空港の到着口には、100人を超える中国本土と香港、日本の報道陣が待ち構えていた。通り掛かった香港市民の1人は「映画スターが来るの?」と目を輝かせた。

 尖閣諸島(沖縄県)に上陸し、強制送還された香港の民間団体メンバーら7人が到着したのだと伝えると、「そう」と立ち去った。空港利用者は、上気した活動家らと、押し合いへし合いの報道陣を遠巻きに見守った。

 取材後、香港中心部のホテルに宿泊した。チェックインしたのは午後11時ごろ。大騒ぎの渦中にいたためか、夜中でも騒々しいネオン街が、いつもより静かに感じた。

 ホテルの近くに沖縄料理店を見つけた。店には、すでに酔った日本人グループが2組と、香港人の客が5人ほど。店員は香港人だ。

 日付が変わるころ、残っていた客に店員も加わり、酒宴となった。日本人駐在員がAKB48のヒット曲を叫ぶように歌い出すと、香港人の客が続いた。AKBで誰が好きか、それはなぜか、という話で盛り上がった。英語と日本語、広東語と北京語が飛び交った。

 ホテルにふらふらと歩いて帰る途中、店員が、店に忘れた折り畳み傘を手に追い掛けてきてくれた。AKBの細かい話にはついていけなかったが、泡盛の酔いも手伝い、心地よく眠りに就けた。

(今村太郎)