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ソウル 愛よりも激励に交換

2012年10月29日

 韓国で日本の電話番号案内サービス104にあたるのは114。かけると出る交換手のあいさつは7月までドキリとするこんな文句だった。「愛しています、お客さま」

 単身赴任の男身の耳に優しい女性の声はまんざらでもなかったが、やはり戸惑った。周囲の韓国人に聞くと、「抵抗がある」と嫌う人や「オレも愛してる」と悪乗りして返したという人もいたが、多くは「あいさつだから」と肯定的だった。

 「愛しています」は日本でいう「お客さまは神様です」のように、謝意や親近感も込めて日常的に使われるようだ。知人の中年男性は娘から「愛しているよ、お父さん」とメールをよくもらっている。私も、別の知人男性が入院して見舞いメールを送ったら「愛してます」と返事が来て驚いた経験がある。

 一方、韓国のあいさつは若干おせっかいにも感じる。食堂では店員が客に「おいしく食べてください」と言い、店で服を買えば「かわいく着てください」と声をかけられる。

 6年ぶりに変更されたあいさつは「元気出してください、お客さま」。運営する通信会社が約1000人の交換手にアンケートして10の候補から選んだ。若者の就職難、リストラ不安が広がる競争社会の情勢が反映された応援、激励だ。やはり、この国らしさがにじみ出ている。 

(辻渕智之)

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