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カンザス州 気の緩みにブレーキ

2012年11月05日

 この広野はオレのものだ-。米中西部カンザス州を運転中、こんな気分になっていた。ほかに車の姿もない。道路が前方で左右に枝分かれしていた。カーナビは左の方へ行けと言っている(ように感じた)。何げなく左側に車線変更した。

 先へ進むと道は一車線に。違和感を覚えたその時、「進入禁止」の看板が目に飛び込んできた。うわっ。逆走している。急ブレーキを踏む。道路の先は下り坂になっていて、対向車が来ているのかどうか見通せない。

 左右に車を寄せられるスペースはない。どうする、どうする。車を降りて対向車を止めるか。いや、そんな余裕はない。バックだ。同乗していた支局助手が「オー・マイ・ガーッ!」と叫んだ。何十メートル後退したか覚えていないが、人生最速のバックで難を逃れた。

 米国は日本と逆の右側通行。注意を怠るとほかに車がいない交差点を左折する際、つい左車線に進入しそうになる。今回の失敗も、干ばつ被害に遭った農村地帯を探し回って運良く農家の親子を取材できた直後で、気が緩んでいたせいだ。

 米国の運転は楽しい。特に地方出張の際には、雄大な景色の中を疾走できる。しかし、それも安全あってのことだ。二度とこんなぶざまな運転はするまい。自戒を新たにハンドルを握っている。 (竹内洋一)