2012年12月07日
猛烈な反日デモが起きた北京の日本大使館の近く。デモが一段落したある晩、同僚と一緒に訪ねた行きつけの焼き鳥店は、ガラガラだった。50席ほどの店をほとんど借り切ったような状態で寂しく食事をした。
反日デモと中国マスコミの反日キャンペーンのせいで、多くの日本人は中国人とのトラブルを恐れて外食を避けるようになった。日本人がよく利用していた店は閑古鳥が鳴く。大半は中国人が経営する店なのに、とんだとばっちりだ。
街中でも日本人は肩身が狭い。知人の奥さんは子どもを連れてバスに乗ると、子どもが話し掛けてくるので日本語を話さざるを得ない。「周りの乗客から白い目で見られるのが苦痛で」と北京を離れることを決めた。
ただ、こういう時だからこそ情けが身に染みることも。ある日本料理店の中国人店員は「店の中では思いっきり日本語を話しても大丈夫」と気遣ってくれ、別の店の中国人店長は「タクシーに乗って、トラブルが起きると心配だから」とマイカーで送ってくれた。
こうなるとお互いさまだ。こちらも客が減った店を応援しなければならない。前にも増して足しげく日本料理店や日式の飲み屋に通うことになる。結局、私の生活パターンは、デモがあってもなくてもさほど変わっていない。 (渡部圭)