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上海 反日愛国踏み絵迫る

2012年12月10日

 「いま日本の新聞の取材を受けて、記事が掲載されてしまうと、周りから売国奴と白い目で見られる。本当に申し訳ない」

 日中国交正常化40周年の節目に、中国の富裕層と貧困層、それぞれの生活ぶりを特集しようと取材を申し込んだところ、次々と取材拒否に遭った。

 狙ったのは、上海の中産階級。安定した収入で、中国の購買力を高めている。最初に取材を打診したのは、日本への留学経験もあるインテリア会社社長。9月初旬に申し込んだ時点では、二つ返事で「OK」だったが、尖閣諸島(沖縄県)国有化問題で日中関係が険悪化した中旬、断りの電話が入った。どこで、どんなポーズで写真撮影するか、そんな打ち合わせまで進んでいたのに…。

 その後、支局の中国人スタッフの友人など10人以上に当たったが、中国メディアが反日キャンペーンを続ける中、いずれも「残念だが、この時期には無理です」との回答。言葉の端々に「本当は協力したいのだけど」との思いがにじんだ。

 日本旅行を取りやめる動きが広がっているが、中止した知人は「本音では『行きたい』。でも、行ってはいけない雰囲気がある」と話した。

 中国政府が反日機運をあおり立てる中、愛国の踏み絵を踏まされている人も多い。 (今村太郎)