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バンコク 悔しい死人に口なし

2012年12月09日

 19年前に東京で女性を殺害したタイ人の男(40)が逮捕され、記者会見をするというので、バンコクの国家警察本部を訪ねた。

 会見場にはタイメディアの記者やカメラマンが大勢詰めかけた。日本で殺人を犯して逃げ戻った容疑者が逮捕されるのは、過去にほとんど例がなかった。タイの殺人罪の時効は20年。成立まであと5カ月だったことも大きな関心を引いた。

 壁際で待っていると手錠をかけられた男が現れ、目の前を通り過ぎて着席した。タイでは容疑者が会見に出て答えるのが一般的だ。

 「女性とは新宿のバーで働いていて知り合った。数日後、女性のアパートで口論になりカッとなって殺した」

 男は犯行翌日に高飛びし、警視庁が割り出した時はすでに遅かった。国際手配されたものの、ようとして行方がつかめなかったが、タイ南部にいることが分かった。

 「逮捕前、日本の検察、警察と緊密に仕事をした」とタイ警察の幹部は胸を張った。犯罪人引き渡し条約がないため、日本での証拠を基にタイで裁く代理処罰が行われる。逃げ得は食い止められた。

 男は「女性と家族に申し訳ない」と謝罪した上で、女性からひどくなじられたと一方的に弁明していた。「仮にそうでも殺すことはないだろう」。そんな悔しい思いで会見場を後にした。(杉谷剛)

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