2012年12月08日
ときは1979年10月。日本からソウルのど真ん中に進出するロッテ百貨店の地下街オープニング式典の前夜、当時の朴正熙韓国大統領が暗殺された。
まだ反日の空気が強く、式典開催に反発も予想された。店側が韓国政府に意向を仰ぐと「にぎやかにやってくれ」の答え。結果、式典は無事終了。店もにぎわった。今では韓国の流通文化を変革したと評価される日韓協力史の序章となった。
最近聞いたそんな話を、ソウルで先日開かれた「日韓交流おまつり」を取材しながら思い出した。民間主催で今年で8回目。竹島や慰安婦問題で両国関係は冷却したが、運営ボランティアには過去最多の950人が応募した。日韓の危機に逆バネが働いたのだ。
岐阜県美濃市の「花みこし」も披露された。みこしの屋根からは、ピンクに染めた和紙の花で飾った竹が200本以上も垂れ、しだれ桜のようだった。終了後は竹を1本ずつ引き抜いて輪の形にして配られた。韓国人の母娘は「桜のクリスマスリースね」と喜び、担ぎ手の美濃の男性は「こうやって仲良くなれば、わだかまりもとけていく」と笑った。
ある韓国人元外交官は嘆く。日韓関係は努力して岩を山頂まで運び上げても、転がり落ちる。その繰り返しだと。それでも岩をまた押し上げようとする人はいる。(辻渕智之)