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掲陽 消された部屋の名は

2012年12月28日

 地方政府の幹部による腐敗が相次いで糾弾されている中国広東省で、取材の足場として宿泊するホテルが、同省掲陽市にある。つい先日、5度目の宿泊に訪れた際のことだ。

 ホテルのレストランは、国名を施した個室が並ぶ。「中国」が最も豪華で、広い。ロシアが続き、日本は韓国と並び数番目だろうか。ちなみに、20ほどの個室がある。

 ところが、先日は「日本」の個室の看板が、「釣魚島(尖閣諸島の中国名)」にすり替えられていた。従業員は、みんな顔見知り。私が日本人と知っているので、以前は満面の笑みで「日本」に導いてくれていた。

 もしも「釣魚島」に案内されたら、どうしよう-。対応を考えているうちに、従業員の機転からか「泰国(タイ)」に通された。何だかほっとした。

 広東省東部の潮州料理を味わいながら、従業員に「何で張り替えたの」と聞いてみた。従業員は「いまは、『日本』の部屋は誰も使わない。下手したら、破壊される」。続けて「釣魚島は中国のもの。それを日本が認めるまで、部屋の名前は戻さない」。

 取材で訪れた漁村では、何度も「釣魚島は中国のものだ」と連呼され、身の危険を感じた。中国メディアのキャンペーンの“成果”か、末端までの「反日」の浸透ぶりに驚かされた。(今村太郎)