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モスクワ 議論を醸す飲酒検問

2012年12月31日

 街角を歩いていて喉が渇くと、ロシアの伝統的な発酵飲料のクワスを買って飲むことがある。独特の酸味が舌を刺激し、ちょっぴり苦みもあるが、慣れるとおいしい。ただ、微量のアルコールを含むため、運転前に飲むことを規制する動きが最近あり、市民に戸惑いが広がっている。

 アルコール消費大国でもあるロシアでは今年9月、飲酒運転の車がバス停に突っ込み、少年らが犠牲となる事故が発生。これを機に、飲酒運転への罰金を10倍にしたり、懲役を科す法案が下院で審議されている。

 そんな中、やり玉に挙がったのが、クワスや、ヨーグルト飲料のケフィアだ。クワスはライ麦、ケフィアは牛乳などを発酵させて作るから、1%前後のアルコール分を含む。飲酒検問に引っかかる可能性があるのだ。

 旧ソ連時代からロシアでは、呼気に含まれるアルコール分が0.5%未満なら飲酒取り締まりの対象外だったが、2008年に0・3%、昨年10月には0%と厳しくなった。

 クワスもケフィアも、家庭で毎日のように消費されている。業界団体や市民から不満や疑問の声が上がっているが、法案を提出した政権与党は変更に応じる気配がない。飲酒運転撲滅への取り組みはいいが、「そこまで極端な規制が本当に必要か」と、論争が続きそうだ。

(原誠司)