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サンセバスチャン 独立談議をつまみに

2013年01月06日

 スペイン北部バスクの観光地サンセバスチャンは美食の街だ。名物は薄切りのパンにアンチョビーやタコ、生ハムなどを串刺しにしたおつまみピンチョス。スペイン風の居酒屋バルをはしごしながら食べるのが観光客だけでなく地元の人の楽しみでもある。

 一方で、ここは分離独立の機運が高いバスク地方の中でも、独立支持の急進左派が強い土地として知られる。

 そんな予備知識を持って地方選挙の取材のためこの街を訪れたのだが、やはりあった。独立支持者のバルが。

 カウンターにピンチョスが並ぶのは他のバルと同様。味もいい。違うのは政治的なスローガンやビラが壁に多数張られていること。20枚ほどの顔写真に目をとめると、「あれは政治犯だ」。地元の男性が解説してくれた。獄中での待遇改善を訴えているらしい。

 居合わせた客は全員が独立を熱望していた。「バスクの経済を悪くしているのはマドリード(中央政府)よ。おかげで若者の就職は本当に難しくなった。私は独立を支持するわ」と熱く語るレイレさんは17歳の女子高校生だった。

 選挙では左翼系の急進派政党が躍進した。あの少し危険な雰囲気が漂うバルでは、ピンチョスを片手にした客たちの「独立談議」が花開いていることだろうと想像している。 (野村悦芳)