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ビレッジズ 夢と魔法の引退生活

2013年01月29日

 これを国力の差というのか。米南部フロリダ州に全米最大級の退職者コミュニティー「ビレッジズ」を訪ねた。ショックを受けたのは、広大な敷地(100平方キロ)に小ぎれいな新築住宅が並んでいたからではない。住民の現役時代の職業を聞いた時のことだ。

 社長や医者、弁護士ばかりかと思ったら、取材した5人のうち4人は元サラリーマン。大金持ちではない。米国では中間所得層に入る。

 ビレッジズには55歳以上の夫婦約9万組が暮らす。20万ドル(約1600万円)程度の一戸建ては、夫婦2人には十分な広さ。連日、街の中でゴルフやテニス、水泳、各種の趣味を楽しむ。「高齢者のディズニーランド」の異名もある。

 住民の1人は「ここで退屈したら、自分のせいだ」と話す。住民向けの情報紙には、連日のイベントがこれでもかというくらいに掲載されている。男性同士の会話は「おい、明日は何して遊ぶ?」といった風情で、まるで少年に戻った感じだ。

 こういう老後を望むかどうかは本人次第だが、仮に日本で同じような街が開発されたら元サラリーマンでも移り住めるだろうか…。どうも現実味がない。「夢の街」を本当に造ってしまうとは、いかにも米国だ。 (竹内洋一)