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モスクワ 日本の技術者よ来れ

2013年01月23日

 「ロシアでは技術者が本当に不足している。日本人にここで勝負してもらいたい」。モスクワの居酒屋で夕食を共にした元大手商社マンが熱く語った。

 定年後も当地に残り、ロシア・東欧で計30年以上、工作機械販売に奮闘しているその初老の男性によると、いまモスクワや近郊にある製造業の工場の8割以上が休止したり閉鎖状態で、工作機械がさび付いたまま放置されているという。

 プーチン大統領は、エネルギー資源輸出に頼る国内の産業構造を変え、製造業育成を再三強調している。国家統計などによると、最近のロシアではITや軍需産業が好調で、特にハイテク関連産業が急成長している。ただ、技術者自体の国外流出が深刻化。マネジメントや市場調査部門の人材不足に加え、輸送や物流管理など製造業を振興するノウハウの不足も問題化している。しかし、これらはいずれも「ものづくり」の日本の得意分野であろう。

 日本から引き抜かれて中国や韓国メーカーに移籍した日本人技術者が、最近は「もはや学ぶものがない」と言わんばかりに冷や飯を食わされ、職を失う例もあると聞く。積極的な進出で大きな存在感を示している中韓勢に対抗するためにも「給料は安いが、ロシアは挑戦しがいがある」と話す元商社マン氏に共感した。 (原誠司)