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ソフィア 逃げられぬ最終兵器

2013年01月24日

 「脱税防止の最終兵器」。ブルガリアの首都ソフィアを訪れてみて、まず浮かんだ言葉はそれだった。

 政府は今年、商店やレストランなどすべての事業所で使うレジ機を国家歳入庁(国税庁)のコンピューターと接続するよう義務付けた。入金のたびに無線装置がデータを発信し、役所のサーバーが記録する。いつ、どれだけの売り上げがあったのか丸裸になる。

 35万台のレジ機に加え、1万5000台の自動販売機に装置が取り付けられた。その結果税収は前年より7億レバ(約350億円)増える見込みだ。歳入庁の男性広報官は「経済成長は横ばいなのに、税収は8%ほど増える」と得意げだ。

 ブルガリアが欧州統一通貨ユーロに仲間入りするには財政赤字の削減が必須。「レジ機に入金しなければ売り上げに変化が出るから、労力を掛けずに脱税予備軍をあぶり出せる」などと広報官の説明にも熱がこもる。

 隣国ギリシャは「文化の一部」と言われるほど脱税が横行し財政破綻の末、欧州債務危機の引き金を引いた。公平で確実な徴税が社会の安定には大事だ。

 でも、やっぱり、このやり方には、すんなり賛成できない。取材後に残ったのは、英作家ジョージ・オーウェルが監視社会の恐怖を予言した傑作「1984年」のイメージだ。 (宮本隆彦)

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