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ガザ したたか生命線再建 

2013年02月01日

 土は想像以上に軟らかく、歩くと靴の裏にベタリと泥が付く。エジプト境界まで、1カ月あれば長さ1キロのトンネルを1本掘れる、との話に納得した。

 数100本の密輸トンネルが、地下を縦横無尽に走るパレスチナ自治区ガザの南部。11月、その大半が、イスラエルの空爆で破壊された一帯を、歩いた。

 掘りやすい半面、崩落など危険も多いのだろう。ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスの当局者によると、作業中の死傷者が多い。この3日間も感電とガス中毒で2人死亡したという。

 「ガザの住民は、このトンネルを必要としている。それに危なくても、他に仕事がないから、みんなここで働くしかないのさ」

 イスラエルに周囲を封鎖されるガザ住民160万人にとってトンネルは文字通り生命線だ。セメント、鉄、食料など品物別に決まったルートがあるという。武器用トンネルもどこかにあるはずだ。

 重機が走り、再建に向けた準備が早速、始まろうとしていた。

 あるトンネルは入り口付近が空爆で損壊。所有者である農家の男性(42)は隣の畑で実っていたオレンジを記者に勧めながら語った。

 「心配すんな、パレスチナ人は賢いんだ。すぐ復旧できるよ」

 踏みつけられても、何度でも起き上がる雑草のようなしたたかさを感じた。 (今村実)