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ニュータウン 無事でも心のけがは

2013年02月09日

 小学1年生のグレイスちゃん(6つ)は、先生に言われた通り、ロッカーの中で息をひそめていた。

 パン、パン、パン-。絶え間ない銃声に重なるように響く、子どもたちの悲鳴も聞いていた。警察官が到着し、近くの消防署へ逃げると、泣きじゃくった。他のクラスの友人の洋服が血まみれだったから。

 米コネティカット州ニュータウンの小学校で小学1年生20人と、教員ら6人が犠牲となった銃乱射事件の取材で、現地を訪れた。

 新潟県出身でこの町に10年以上住むフィッシャー順子さん(39)の次女グレイスちゃんは、現場に1番近い教室にいた。帰宅直後、順子さんが様子を聞くと「思い出したくない」とぼそっと言った。

 襲撃された教室にいた小学1年の男児は、自宅のドアベルで身を震わす。「悪い人がぼくを追っかけてくる」

 担任教師(27)や友人が撃たれたのを見た。教室の出入り口から、ライフル銃を発砲する男のすぐ横を通り過ぎ、外へ逃げ出した。

 「先生はけがしたよ。治るよね」。担任教師の死を両親はまだ打ち明けきれずにいる。地元の古株検視官が「あんな悲惨な現場は見たことがない」と言うほどの惨劇。わが子を亡くした親はもちろん、生き残った子どもらの心中を思うと、やりきれない。 (長田弘己)