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カイロ 指導者闘志内に秘め

2013年02月20日

 「私はムアズです」

 突然、相手から飛び出した日本語に驚いた。少しはにかんだ表情が印象的だった。

 内戦に陥ったシリアの反体制派「国民連合」トップ、ムアズ・ハティーブ議長と昨年末、エジプトのカイロで会う機会があった。

 50代前半。政権の後ろ盾、ロシアに謝罪を要求したと伝えられるなど、時に強硬姿勢も。だが、会うと物腰の柔らかい紳士と言った方がふさわしい。

 それもそのはず、以前はシリアの首都ダマスカスで、有名なモスクのイマーム(指導者)を務めていた。

 反体制運動を支援して、逮捕されるなどした後、出国。国民連合のトップに担ぎ出された。闘志は内に秘めるタイプなのだろう。

 内戦は、国民が敵と味方に分かれて殺し合う深刻な宗派対立の様相だ。この状況を尋ねると、トルコの難民キャンプを最近、訪問した体験を口にした。

 同氏が「すべての人々は、互いに尊重し合うべきだ」と呼び掛けると、同胞らはうなずき「そうだ、シリア人は1つだ!」と叫び始めたという。

 「人々はまだ、心の中では、以前のように一緒に暮らしたい、と願っているのです」

 内戦の行き着く先は見えないまま、亡命先で越年。国民和解のほのかな希望が、異国で心の支えとなっているようだ。 (今村実)