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ムザファラバード 信じるもの違っても

2013年02月21日

 モスク(イスラム教礼拝所)から祈りの時を告げる響きが周囲の山々にこだまする。パキスタン北東部アザド・カシミール特別州の州都ムザファラバード。ここに家族と引き裂かれた人生を送ってきた人たちがいる。

 イスラム教国のパキスタンと、ヒンズー教徒が多数派のインドの間で起きた第一次印パ戦争で、カシミール地方は1949年に分断され、主にイスラム教徒はパキスタン側へ、ヒンズー、シーク教徒はインド側へ渡った。

 幼少期、ムザファラバードに住んでいた男性(57)もその1人。母親はシーク教徒で、イスラム教徒の父親との結婚を機にイスラム教に改宗したが、停戦ラインが引かれると、母親は夫や子どもを残してインド側へ。

 母親と連絡が取れたのは約半世紀後の2003年。1歳半で別れたため、母親の記憶はなかったが、電話口の声に心を揺さぶられた。だが、それもつかの間、母親がインド側で出産した弟に男性の存在を隠していたことを知らされ、深いショックを受けることになる。母親はシーク教に戻っていた。「パキスタン側にイスラム教徒の子どもがいるなんて言えなかったのだろう」と語る。

 親子はその後、再会。男性は「宗教が違っても家族は家族」と。母親は12年秋、静かに息を引き取ったという。(寺岡秀樹)

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