2013年03月31日
一時帰国で買ってきた土産物を届けようと知人宅を訪れた。直前に電話して知人が自宅にいるのを確認したのだが、知人宅に着くと当人は不在。すると息子さんが「買い物に出かけました。もうすぐ戻ってくるので待っていてください」と応対した。
少しいぶかしんだがその謎はすぐに解けた。訪れたのは春節(旧正月)明け間もないいわゆる「松の内」。後から知ったのだが、北京では自宅を訪れた友人、親戚に食事をごちそうするのがマナーという。夕食時を避けようとやや早めに訪問したつもりだったが、知人は気を回して食事の準備に出かけていたのだ。
急な訪問にもかかわらず、食卓には牛肉や豚肉、羊肉までさまざまな料理でいっぱい。客は私1人なのに、食べきれないだけの肉料理を出すのも春節ならではという。土産を届けてすぐ立ち去るつもりだったが、気が付けば3時間以上もお邪魔し、白酒(バイチュウ)もいただきすっかりほろ酔い加減に。帰り際には土産までいただいてしまった。
「『宵越しの銭は持たない』という江戸っ子気質に似てますね」と話すと、知人はにやりとうなずいた。渋滞や大気汚染など年々住みづらくなる北京だが、久しぶりに昔ながらの熱心な歓待を受けておなかも心も温まった。
(新貝憲弘)