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江華島 至る所に名物と歴史

2013年04月13日

 ソウル近郊の江華島で、おいしい物に出会った。「ペンデンイ・ムッチム」。ニシン科の小魚・サッパの刺し身とキャベツなどを、辛酸っぱいトウガラシみそであえる。こりこりとした食感。ほどよい脂の乗り。「この時期が旬」と食堂のおばさんが胸を張る通り、重すぎず淡泊すぎず、穏やかな春を感じる味だ。

 サッパをつくねにして辛い鍋もいい。すりつぶしきれていない骨の硬さが、アクセントになっている。サッパは岡山県などでは「ままかり」と呼ばれている。うまくてご飯を借りてきたといういわれの通り、食が進む。

 島は陸地から橋が架かり、ソウル中心部から車で1時間ほど。それでもソウルでさっぱりお目にかからないのは、鮮度を保つのが難しいからだという。

 島に向かう際、韓国の友人が漢江の堤防道路を走ってくれた。対岸は北朝鮮。北朝鮮軍の上陸に備えた鉄条網が続き、韓国軍の軍用船が係留されていた。

 朝鮮王朝時代、島には要塞(ようさい)式の砲台が設けられていた。1875(明治8)年に、この砲台と日本の軍艦が交戦。これを機に日本は朝鮮への開国要求を強め、日朝修好条規(条約)締結につながった。

 至る所でおいしい物に出会い、北朝鮮や日本との歴史を感じる。それが韓国だ。(篠ケ瀬祐司)