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南楊州 何と美しいプロたち

2013年04月22日

 ソウル市に隣接する京畿道南楊州市の中央119救助隊で、李起元(イギウォン)消防長(44)に話を聞いた。2011年3月11日の東日本大震災で、韓国が派遣した5人の救助隊先遣隊のメンバーだ。

 地震翌日に2頭の救助犬を連れて来日、14日到着の本隊102人と23日まで、宮城県内で活動した。地震発生から時間が経過しても、「津波で孤立した人が助けを待っているかもしれない」と、生存を信じて捜索を続けたという。

 捜索現場で、両親と5歳くらいの女の子の写真を握りたたずんでいた人を、よく思い出すと李さん。「何としても捜し出したかったのですが、果たせませんでした。残念でなりません」。2年たった今も、被災した人たちに心を寄せていた。

 救助犬の一頭がガラス片で右後ろ脚に深手を負い、離脱。「救助犬が逃げた」とのうわさが広まった。

 無念だったのではと尋ねると、李さんは穏やかな口調で答えた。「1つのエピソードです。それよりも帰国後、現地で救助犬の縫合手術をした日本人外科医から『傷は大丈夫か』と電話がきたのには驚きました。自分の手術に、最後まで責任を持ちたいという思いなのでしょう」

 李さんも、この医師も。責任を果たそうとするプロたちの、なんと気高く美しいことか。(篠ケ瀬祐司)