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上海 インフル対応も極端

2013年05月08日

 過敏なのもいけないが、無防備すぎるのもいかがなものか。上海を中心とした中国東部で感染が拡大したH7N9型の鳥インフルエンザについて取材して回った印象だ。

 上海で死亡した男性(27)が働いていた郊外の市場からは、売られていたニワトリからウイルスが検出された。市場が消毒されたと聞いて取材に訪れると、消毒済みは鳥を扱っていた一角のみ。数メートル脇では、年配の男性が椅子に腰掛け、赤ちゃんを抱きながらまどろんでいた。

 小さな体育館ほどの市場は、鳥売り場と並んで野菜や豚肉、牛肉、加工食品を販売。商品は陳列台に無造作に置かれて売られ、入り口から入ってきたスズメがその上を飛び交っていた。働いていた人たちは「消毒したんだろ。もう大丈夫さ」と意に介さない。

 鳥の取引停止前、都心部でニワトリを売っていた女性は記者の前でその1羽にキスをしてみせ、「こんなに仲が良いから、私に(ウイルスを)うつすわけがない!」。

 一方、大げさな情報も飛び交うネットに親しんでいる若者には「鳥肉はもちろん、豚も牛も食べない」「心配だから、落ち着くまでは地下鉄やバスには乗らない」という過剰な意見も多い。深刻な格差社会の中国だが、ウイルスに関する情報や対応にも極端な差を感じる。 (今村太郎)