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ボストン 地域社会を思う言葉

2013年05月20日

 米ボストン連続爆破テロ事件の容疑者が捕まった直後、地域にあるイスラム協会のモスクを訪ねた。週末だったためか、正面玄関は閉ざされ、何度呼び鈴を押しても返事はなかった。

 イスラムの過激思想を背景とする事件が起こるたび、テロとは全く無縁な一般のイスラム教徒に対する心ない偏見も、姿を現す。米国だけではなく、どの国でも同じだ。

 扉に1枚の紙が張ってあった。地域社会の一員としての、事件への怒りや悲しみ、警察への感謝などがつづられていた。2人の容疑者は、イスラム教徒として同協会の集まりにも顔を出していた。そのことへの衝撃も述べられ、米連邦捜査局(FBI)の捜査などに対し全面的に協力することも記されていた。

 裏に回ってみると、モスクに来た男性に出会った。「私は礼拝しに来ただけだから話はできない。責任者がそのうち来るからその人に聞いて」。しばらく待ってみたが、結局その日は「責任を持って話せる人はいない」とのことだった。

 玄関のポストの上を見ると、植木鉢が置かれていた。だれかが自分で届けたのだろう。小さな青い花がつぼみをつけていた。ピンク色の小鳥と木の枝が描かれたカードが挟んであり、「地域の一員でいてくれて、ありがとう」と書いてあった。 (吉枝道生)