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パリ 激論の傷痕は癒えず

2013年05月17日

 「おまえは原理主義者だ」。険しい表情の中年男性が目の前に割って入ってきた。

 同性婚を認める法案がフランスで成立した4月下旬。パリ中心部の街角で、法案に反対する25歳の青年に話を聞いていた際のことだ。「同性愛が悪いのではない。問題なのは養子を認めること。判断力が未熟な子どもが犠牲になる」などと青年が話すのが、同性婚賛成派とおぼしきその中年男性の耳に入ったようだ。彼は青年を「カトリックの原理主義者」と決めつけ、さんざん罵倒して去っていった。

 30分後、同性愛者の30代男性に話を聞いた。彼は同性婚合法化を喜んでいたが、同時に同性愛者への反発が膨らんでいることにおびえていた。「街で男が同性愛者を襲撃しているから気を付けろというメールが流れてきた。うそか本当かは分からないが、こんな恐怖は初めてだ。同性愛者への反感は間違いなく膨らんでいる」と嘆いた。さらに「今まで距離があった右派と極右がこの問題で手を組んでしまったんだ。これも怖い」とも。

 オランド大統領が公約した同性婚合法化は激しい論議を呼んだ。特に合法化反対のデモは激しさを増すばかりで、法律成立後も運動は続いている。左派の政治家は快挙と合法化を喜ぶが、しばらくは社会の傷が癒えそうにない。 (野村悦芳)

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