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丹東 対岸との友情今は昔

2013年05月30日

 6年半ぶりに訪れた中国遼寧省丹東の街は高層ビルやマンションが増えていた。3年前に建てられた展望台から街並みの発展ぶりが一目で分かる。郊外には新区も開発され、土ぼこりのなか中国の各地で進む「都市化」を実感できる。

 一方、中国と北朝鮮を隔てる鴨緑江の向こう岸、つまり北朝鮮の新義州はその大半が未開発の平原のままで、6年前とあまり変わらない。かたわらで中国人の父親が幼い息子に「あれが北朝鮮だよ。(あそこでは)飢え死にするよ」と話していたのが耳に残る。

 知り合った中国人の多くも、北朝鮮に対して「貧しい」というイメージを持っており、時には哀れみや優越感すら示す。「(北朝鮮の人は)何を考えているか分からない」「気味が悪い」という声も聞いた。ミサイル発射や核実験など度重なる暴挙や強硬姿勢だけでなく、ビジネス面でも態度がころころ変わる北朝鮮にへきえきしているからだという。

 「血で固められた友情」と称された中朝関係は、少なくとも庶民の間では過去の話となったようだ。朝鮮半島情勢が緊張するたび友好国として中国の仲介を期待する声が高まるが、「言うことを聞かない弟(北朝鮮)に頭を悩める兄」と例えられる中国の立場も理解できる。いずれにしても振り回されるのは両国民だ。 (新貝憲弘)