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宜蘭 落ち着く昭和の香り

2013年05月29日

 休日、台湾東部の宜蘭市を訪れた。駅前の観光案内所で聞くと「環状の旧城路の中が旧市街で1周、歩いても1時間半ですよ」。「では-」と観光案内図を片手に歩き始めた。

 高層ビルがないから空が広く、車も少ないので、ゆったり。あちこちに文化財指定の日本統治時代の建物が残るが、それがのんびりした街の雰囲気に溶け込み、調和。1つには建物が今も普通に使われているからだろう。

 昭和初期に建てられた赤煉瓦(れんが)の旧米穀検査所宜蘭出張所は軽食店。黒い瓦屋根で青い和洋折衷のしゃれた洋館は明治29年建造の旧宜蘭監獄門庁(監獄のオフィス)でレストラン。今は巨大ショッピングモールに。

 そこから歩いて数分の所に「宜蘭文学館」の看板のある古びた木造平屋建ての日本家屋があった。玄関脇に「旧農学校校長宿舎」とあり、昭和元年の建造。靴を脱いで上がると、2間続きの畳の部屋。文学館というが、書棚に何冊かの本があり「自由にお読みください」と張り紙。ここも喫茶店になっていた。

 座布団に座って1杯100元(約300円)のコーヒーを飲む。ガラス戸の向こうの庭は緑一色で、落ち着く。子供のころにタイムスリップしたような感じで、何だか懐かしく幸せな気分。座布団を枕に畳に寝転びたくなった。 (迫田勝敏)