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ブラウンラーゲ 震え上がる山麓の夜

2013年06月06日

 年に1度、魔女たちがドイツ中部ハルツ山地に集まり、飲めや歌えの祭りを催すという。ゲーテの戯曲「ファウスト」にも描かれた「ワルプルギスの夜」を味わいたくて、4月30日の夜、ブロッケン山麓のブラウンラーゲを訪れた。

 夕闇迫る村の中心部にマイカーを乗り入れると、そぞろ歩く人のほとんどが魔女! 定番のとんがり帽子に加え、薄気味悪いメークの本格派もいる。わが家も土産物屋で買った魔女の帽子を娘たちにかぶらせ、会場の公園に向かった。

 大きな池を取り囲む公園はそれこそ魔女だらけ。魔女と悪魔のカップルや、そろいの魔女衣装で決めた地元のおばさんチームがひしめき合い、屋台のソーセージをさかなにビールを飲みまくっている。池の中央のステージからはロック演奏がガンガン流れ、魔女たちが縦ノリする。

 それにしても自己主張の強いドイツ人はただでさえ怖いのに、魔女や悪魔の格好の彼らはもっと怖い。普段は東洋人がほとんどいない田舎。すれ違う魔女や悪魔がことごとく「おや?」という表情で見つめてくるものだから、魔女狩りの逆で「こちらが魔女に狩られそう」との妄想まで湧く始末。

 夜通し続く祭りだが、「もう子どもには遅い時間だから」と家族をせかし、早々に退散した。 (宮本隆彦)