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シエムレアプ 富士山 夢への1合目

2013年06月05日

 日本にいた4年間、彼の心の支えになったのは富士山だった。

 世界遺産のアンコールワットで知られ、世界中から旅行者が集まるカンボジア北西部の観光地シエムレアプ。ガイドの男性パラットさん(34)が日本行きを決意したのは22歳のときだった。

 フランス語を身に付けて専門の観光ガイドをする父に影響され、「日本語を勉強して旅行会社をつくりたいと思った」。静岡市でアパートを借り、日本語学校に通ったが、「最初は言葉がまったく通じず大変だった」。

 そんな時、同級生らと富士山頂に登った。「カンボジアにはあんなに高い山はない。頂上からの景色は本当にきれいだった」。以来、魅力に取りつかれ、毎日のように仰ぎ見た。回転ずし店でアルバイトをしながら猛勉強して会話を身に付け、漢字も覚えた。

 卒業後は静岡・伊東のホテルに住み込みで働きながら、熱海の観光専門学校で2年間みっちり勉強した。そのときも2回、日本の友人らと富士山に登った。最近、世界遺産への登録が濃厚となり、「ぜひ実現してほしい」と願っている。

 「登っている間は苦しいが、頂上に着いたときは何よりもうれしい。それはきっと人生に似ている」とパラットさん。旅行会社という夢の実現に向け、今は自分の山を登り続ける。 (杉谷剛)

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