2013年06月27日
カナダ第2の都市にして、フランス語圏のモントリオール。にぎやかな大通りにある「エクスプレス」という名のフランス料理店は、仕事帰りの会社員や家族連れでにぎわっていた。
支配人のジラールさん(39)は13年前に南フランスのマルセイユからカナダに移り住み、ここで働き始めた。「みんなバカンスには南仏に行きたがるけどね・・・。家族を養うには、仕事のあるカナダが良かった」と言う。
この店にはちょっと変わった趣向がある。壁一面にいくつもの大きく引き伸ばした白黒写真が飾られているのだ。料理人やウエーター、ウエートレスが数十人、勢ぞろいして笑顔を見せている。
開店翌年の1981年以来、年に一度撮影する従業員の集合写真だった。飲食店が宣伝として有名人が訪れた際の写真を飾ることはよくある。この店にもロバート・デニーロさんやアンジェリーナ・ジョリーさんらセレブが訪れるという。しかし、その写真はない。
探すとジラールさんは子どもと一緒に写っていた。「これは家族の歴史なんだ」と誇らしげな顔を見せた。
移民の生活は楽ではなかったろうと思う一方で、何だかうれしくなった。有名人の写真よりも従業員の笑顔が続いていることが、実は最高の宣伝なのかもしれない、と思い至った。 (斉場保伸)