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ニコシア 「壁」の消える日願う

2013年06月28日

 金融危機で世界の注目を集めた地中海のキプロス。1974年の内戦以来、ギリシャ系とトルコ系住民が南北に分かれて暮らす分断国家だ。

 首都ニコシアにも東西に分断線が走る。旧市街の曲がりくねった路地を行くと、突然、目の前に鉄条網やドラム缶で道路をふさいだ「壁」に出くわす。

 人けのない深夜、壁に向けてカメラを構えると、上方から「カタリ」と音がして肝を冷やした。振り向くと、壁の上にある見張り所の兵士と目が合った。冷戦の遺物として観光名所になったベルリンの壁と違い、いまだに現役の軍事境界線だ。

 そんな緊張感をまとう壁の脇に、テラス席を備えたレストラン「ベルリンの壁」がある。「壁のすぐ近くにあるから、有名なベルリンの壁にあやかったのさ」と男性店主(56)。気楽な物言いは、10年前に始まった南北往来が醸成した信頼関係のおかげかもしれない。

 人口200万足らずの島で、既に延べ2200万人が南北を行き来した。今では通勤や買い物で日常的に越境する人も少なくない。北に住むトルコ系男性の洋服店員(70)は「われわれは互いに仲良くやれることを証明できた」と南北統合に期待する。

 ニコシアの壁にも、観光客が無邪気にカメラを向けられる日が来ることを願った。 (宮本隆彦)

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