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パリ ストの数だけ問題が…

2013年07月08日

 不機嫌な表情の人たちが電車の車両に押し合いながら入ってきた。どこかの路線がストップし、突然乗り換えを強いられたらしい。原因はスト。パリの鉄道職員が乗客から暴力を振るわれたのを機に、職場の治安を訴えるため、同僚が抜き打ちで実施したことが後になって分かった。

 フランスには問題の数だけストがある、と思うことがある。4月にはルーブル美術館で、職員が館内でのすりの多発に抗議しストに突入。観光客は閉め出された。

 ルーブルと並ぶ西部の観光地、モンサンミッシェルでは今月、駐車場代値上げに反対するバス会社従業員らがストを打った。制度改革に反対する空港管制官と国鉄職員の大規模ストは、利用客に大きな影響を与えている。

 「無関係な乗客はかわいそうですね」と知人のフランス人女性。言葉にはどこか、ストだから仕方ないというニュアンスが感じられる。「バカンスの前後は多いですよ」と事もなげだ。

 ルーブル美術館に行ってみた。あちこちに「すりに注意」のプレート。警戒要員とおぼしき職員が目立つ。すり多発地帯とされた「モナリザ」周辺は平穏だ。スト後、警察などが巡回を強化したおかげで、被害は激減したらしい。突然のストにも驚かされるが、ストの効果にもまた驚かされる。 (野村悦芳)