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ニューヨーク 7カ国語が飛び交う

2013年07月22日

 わが家の窓から首を突き出す。右側は行き止まりなので、左側を見る。道端で遊ぶ子供たちといくつかの家が見える。視野の中に7カ国語が入っている。

 米国ではみなが英語を話すわけではない。それを実感するのがこの光景だ。日本人のわが娘と遊んでいる隣家のフィリップは、父親とフランス語で話す。父はフランス語が母語のカナダ人、母はロシア人。三軒先から遊びに来ているアンソニーとソフィアの兄妹は英語を話すが、両親はスペイン語だけ。

 すぐ脇で古い家を直している大工さんたちもみなスペイン語。でも、棟梁(とうりょう)親子はイタリア語で話している。その向かいは中国から来ているし、その隣は・・・。

 きりがないが、直近の五軒で使われている言葉だけでも7種類に上る。

 フィリップの父親は「子供に対してどの言葉をどの程度使うか考えている。英仏だけでなく、ロシア語もね」と笑う。イタリア生まれの棟梁は「息子とはイタリア語、みんなとはスペイン語。それが自然」という。

 複数の言語を巧みに操る姿は、外国語で苦しむ身にはまばゆい。でも、言葉が通じない者同士もいる。そのときは笑顔を向け合う。移民の集まるこの場所を支えているのは、笑顔だ。そう信じて窓から首を出し、満面の笑みを投げている。(吉枝道生)