2013年07月30日
街の中心から地下鉄で4駅の所に、欧州連合(EU)の本部がある。欧州委員会が入るビルを中心に2万3000人余りが働くこの巨大組織は、ブリュッセルの一大産業だ。職員の1割にあたる上級幹部の月給は、キャメロン英首相(約180万円)を上回る。
ここからは「指令」と呼ばれるEUルールが発せられる。英国の欧州懐疑派と呼ばれる人たちは、生活のすみずみまで規定しようとするEUの“おせっかい”ぶりが、どうにも気にくわないようだ。
例えばキュウリの品質。曲がり具合が長さ10センチあたり10ミリ以内が特等で、その2倍以内なら一等と最近まで決められていた。バナナの曲がり方にもかつて指令があり、「真っすぐなバナナ」は、EU規制をやゆする格好の合言葉になっている。
新聞にとってもEUはネタの宝庫。2005年にEUが、従業員を皮膚がんの危険から守るため長袖着用などを義務付けようとした際には「(外の客にビールを運ぶ)パブの女性の胸元まで覆うのかい?」と、タブロイド紙があげつらった。
一方で英国では重さや距離の単位が、徐々にEU仕様に移行しつつあり、既にグラムやメートルしか知らない世代が育っている。首相が17年に実施を約束したEU離脱の国民投票は、どんな結論が出るのだろう。(石川保典)