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カイロ 負のエネルギー充満

2013年08月19日

 奇妙な光景だった。反政権派が集まるタハリール広場で、数十万人が軍介入の声明を待ち望んでいる。

 それはクーデターを告げるものなのだが、スピーカーから流れる軍トップの声に耳を澄ましていた若者らの大歓声は、ロックコンサートの会場でも聞かれないすさまじいエネルギーだった。

 超法規的に国の権力を奪取した文字通りのクーデターだったが、軍は反政権デモを主導した市民団体や野党指導者らと、事前に相談していたとされる。反政権側と軍が協力した妙なクーデターは、反動も大きかった。

 2日後にエジプト第2の都市アレクサンドリアで起きた反政権派との衝突で、少なくとも17人が死亡。政権支持者らは火炎瓶を投げ、散弾銃や機関銃を撃ち、屋上から人を投げ落とす狂気に満ちていた。

 地元紙によると、高校生のハマダ君(17)はその日、友人2人と6階のビル屋上から眼下の衝突を眺めていた。狙撃手と誤解されたとみられ、多くの大人が駆け上って彼を突き落とした。出血多量で死亡したハマダ君は、父親のペンキ業を手伝う穏やかな少年だったという。

 「エジプト人同士が殺し合うなんて」

 衝突と銃撃が繰り返され、殺伐とした空気が覆うエジプト。民主化の春は遠い。(石川保典)

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