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台北 男たるもの「山本頭」

2013年08月12日

 日本統治時代を経験した台湾には今も多くの「古い日本」が残っている。建物なら今の総統府は昔の総督府、台北市内にはあちこちに日本家屋がある。言葉なら「欧巴桑(おばさん)」「運将(運ちゃん)」など。

 最近引っ越した下町の万華区で理髪店に行くと、そこにも日本が残っていた。店の表示に「平頭」「山本頭」とある。平頭は角刈り。頭頂部を平らにするからその名がある。「山本頭」はまさか山本さんの髪形の意味ではあるまいが…と聞いてみると、「そう、そうだよ。山本の髪形だ」とおやじさん。

 と言われてもどこの山本さんなのか。「知らないのか。日本人なのに。あの有名な軍人の山本だよ」。よくよく聞いてみると、山本さんはなんと連合艦隊の山本五十六司令長官だった。角刈りの一種で額の生え際にそりを入れてM字形にきれいにそろえる。それがかっこよく男らしく見えるのだという。

 以前に住んでいた地域の理髪店には「山本頭」などという表示はなかった。なんでこの辺の理髪店には多いのだろうか。「そりゃ、ここは万華だからさ」とおやじ。万華は数年前、極道組織の抗争を描いて日本でも上映された映画「モンガに散る(原題・●●)」の舞台。確かに街では山本頭のお兄さんたちを見かける。 (迫田勝敏)

(注)●●は舟へんに孟と舟へんに甲