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ロンドン 自然体親子デビュー

2013年08月22日

 生まれたばかりの「ニュープリンス」を抱いて病院から現れた2人は、親になった喜びが素直に表れていて自然体だった。

 報道陣の質問に「自分より髪の毛が多いんだ」と冗談を交えるウィリアム王子。「幸いにも(顔は)妻に似ていてね」と言うと、隣のキャサリン妃が「ノー、ノー」とほほ笑み、合いの手を入れる。

 翌日のメディアは、夫妻を「気取らず、喜びと誇りに満ちていた」と評した。王子がベビーシートを自ら車の後部座席に取り付け、自分で運転して病院を去っていった「普通の父親」の演出も、好感を呼んだ。

 31年前、王子はチャールズ皇太子に抱かれて、母親の故ダイアナ元妃とメディアの前に現れた。両親が離婚したのは王子が13歳のとき。1年後には、母親をパパラッチに追われた悲劇の事故で失った。以来、王子は家族を公務の犠牲にはせず、世間の好奇の目から守り抜く-と決心したといわれる。

 乳母を雇わずに、なるべく妻と2人で育てようという王子は、出産後に2人で祝福する時間を持ちたいと、誕生の公式発表を数時間遅らせたという。妻子を大切にする王子の意思は、相当に強い。

 そうした頑(かたく)なさを、みじんも感じさせなかった親子のデビュー。さわやかだったとしか言いようがない。 (石川保典)