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ウィンチェスター 日本兵恐れた中国軍

2013年08月27日

 「日本」という言葉を耳にするとは予想していなかった。米南部バージニア州ウィンチェスターで7月中旬、朝鮮戦争に従軍した元兵士の会合を取材し、西部アリゾナ州から出席したデビッド・ミルズさん(77)にインタビューした。

 1953年春、17歳の少年兵は38度線近くで中国軍の捕虜になり、北朝鮮側の拠点に連行された。中国兵に尋問された際、最初に「おまえの部隊には日本兵がいるのか」と問われた。次の質問は「なぜ米兵は追い詰められても、そんなに戦うのか」だった。

 捕虜になる直前、所属部隊は中国軍に攻め込まれながらも応戦。最前線で最後まで戦ったのがミルズさんだった。日中戦争の記憶がまだ生々しい時期のことだ。中国軍は米部隊の猛烈な戦いぶりに旧日本軍の幻影を見たのかもしれない。

 あるいは、当時発足したばかりの日本の保安隊(陸上自衛隊の前身)が参戦していると疑ったのだろうか。ミルズさんは「中国兵は日本兵をすごく怖がっていた」と振り返る。特需に沸いていた日本では、参戦なんて誰も夢にも思っていなかったはずなのに。

 老兵は60年前の戦場を語る30分の間に当時は流さなかった涙をハンカチで2度ぬぐった。そしてこう付け加えた。「中国と北朝鮮は今も日本を恐れている」 (竹内洋一)

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