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日月潭 マナーよりも上得意

2013年09月26日

 台湾中部の山間部に位置するダム湖の日月潭(にちげつたん)。湖の中央には小島が浮かび、その東側の形が太陽に、西側が三日月に似ていることから、この名がついたという。青々と生い茂る樹木が静謐(せいひつ)な湖面を囲んでおり、水墨画に出てきそうな景色を織りなしている。

 中国本土でも有名な景勝地だ。中国の小学2年生が使う国語の教科書には「日月潭はわが国台湾省最大の湖である。大変深く、湖水は青緑・・・。風景はすぐれて麗しく、国内外からたくさんの旅行客をひきつけている」と紹介文が載る。

 好天の週末。本土から訪れた多くの観光客に湖畔で会った。湖名を彫り込んだ石碑を背にして記念写真を撮ろうとすると、中国人の家族5人が私を押しのけて、石碑の前に陣取った。大声で笑い、ずっとシャッターを切っている。他の観光客など眼中になし。撮影は20分も続いた。

 撮影の順番を待っていた地元の若いカップルと目が合うと、手を広げて苦笑。2人は撮影をあきらめて、その場を離れていった。

 台北でタクシーの運転手に話をすると「本土の客は騒がしく、マナーに欠ける」とまずは愚痴が出た。そして続けた。「でもね、日本人より、お金は断然多く使ってくれる。だからさ・・・」。背に腹は代えられぬ、ということだろうか。 (城内康伸)