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済南 昼ドラのような裁判

2013年10月15日

 まるで「昼ドラ」のようだ、というのが率直な感想だ。山東省済南市の裁判所で5日続いた、元「エリート高官」薄熙来被告(64)の裁判。法廷で明らかにされた話は、想像以上に生々しかった。

 検察側と弁護側の主張が食い違っている部分もあるが、語られたのはこんな「ストーリー」だった。まず妻が関係の深かった英国人実業家を毒殺した。妻からそれを打ち明けられた夫(薄被告)の側近が夫に暴露。夫は否定する妻を信じ、側近を暴行する。身の危険を感じた側近は米総領事館に駆け込んだ。実は、側近は妻に好意を抱いていた-。

 長身で端正なルックスの夫、美しい弁護士の妻、マフィア取り締まりで名を挙げた警察官出身の側近、と登場人物の「キャラ」も立っている。妻が賄賂として受け取ったのはフランスの高級別荘といった話も。あまりに浮世離れし過ぎて、脚本家もドラマにしようと思わないかもしれない。

 厳戒態勢が敷かれた裁判所の周辺では、被告を支持する人たちがいた一方、変わらぬ日常を送る人たちがいた。済南名物の泉で生活用水をくみ出す人、黙々と街路の整備に励む人。登場人物たちの毒気に当てられたせいだろう。市井の人たちが妙に輝いて見えた。日常の営みの尊さを感じずにはいられなかった。 (佐藤大)