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ワシントン パイでつながった輪

2013年10月16日

 自分のお金をほとんど使わずアメリカ大陸を車で横断し、各所で無料のアップルパイを配っている男女3人の若者グループがいる。先日、ワシントンの中華街で配っていたと地元紙で読み、興味を持った。リーダーのサラさん(28)と電話で話すことができた。昨夏から220個のパイを焼き、1540人に配ったという。

 きっかけは昨年の上院議員選挙。「大規模な投資による経済成長ばかりを強調する候補者の演説を聴いて、とてもしらけた気分になった。でも不満を抱えているだけではいけないと思ったんです」

 そのとき、大企業の投資の対極として、自分でパイを焼いて配ることを突然思い立ったという。「私は小麦農場も、リンゴの木も、トラックもお店も持っていない。でも、私が焼いたパイは確かにここにある。何百万人の助けが集約されているパイを配ることで、その思いを共有できたら」と考えたそうだ。

 行く先々で寄付を集め、パイを焼くための台所を貸してくれる人を探した。見つからない場合は、配布の予定を取りやめることも。

 数日後にはリンカーン記念館周辺でパイを配ると聞いた。その時間に出掛けたが、会えなかった。今回は駐車場探しで時間がかかり、開始が遅れたという。ますますそのパイを食べてみたくなった。 (斉場保伸)