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サンクトペテルブルク 翻訳ソフトがあだに

2013年11月18日

 ロシア第2の都市サンクトペテルブルクには、橋梁(きょうりょう)が中央部分から左右に立ち上がる「跳ね橋」が21カ所ある。大型貨物船や軍艦を夜中に通すためだが、観光スポットの1つになっている。

 しかし、記者にはそれが障害となった。午前2時、宿泊していたホテルから、急ぎの用事で別のホテルに向かおうとフロントでタクシーを頼むと、断られた。午前4時まですべての橋が跳ね上がっていて、目的地に行くのは無理だとか。

 「急病患者でも出たらどうするのか」と質問してみた。フロント従業員は「この地域はずっとこうだ」と素っ気ない対応だった。

 こんな話もあった。当地で9月に開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議を機に、ロシア語だけだった市内の路上案内看板が、英語併記の物に交換された。ところが、○○病院は「クリニック・ゼム・○○」と意味不明。××駅は、元の名称の原形をとどめず、「プロムナード・ドゥ・××」などに。地元の人も混乱し、英語表記で道を尋ねても、どこにあるのか分からない。

 なぜそんな訳語になったのかを市役所に取材した地元紙記者に聞くと、市の担当者は「請負業者が使った翻訳ソフトが悪かった」と釈明したそうだ。「観光文化首都」を目標にしているが、道のりは長そうだと感じた。 (原誠司)