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銀川 不良品ではなく親切

2013年11月22日

 出張先でいつも頭を悩ませるのは、土産に何を買えば良いかだ。できればその土地の名産品をと思っても、中国の食品は味覚や好みの違いからか日本人の口に合わないものが多い。結局クッキーやチョコレートなどありふれた菓子類で済ませてしまうことも少なくない。

 中国寧夏回族自治区・銀川の空港で土産物選びをしていた時、ある菓子に目がとまった。「高カルシウムミルク豆」と書かれた袋には、白い小粒の玉が詰まっており、イスラム教徒向けを示す「清真」のマークも。イスラム教徒の多い銀川らしい土産と思いつつ、口に合うか不安に思っていた時、そばにいた店員が袋を手渡してくれた。

 ところが袋の底を見ると、小さな穴が空いている。不良品だと思って返そうとすると、店員は慌てず「ここから1つ取り出して食べて良いですよ」とささやいた。店員の言葉に驚きつつも、慎重に1つ取り出して「試食」すると予想以上においしかった。

 おかげで満足のいく買い物ができたが、さらに驚いたのは店員が穴が空いた袋を何事も無かったかのように棚に戻したことだった。穴の空いた袋は店員が独断で用意した「試食用」だったのかもしれない。だとしても気づかずに購入してしまうリスクは考慮していないようだが。 (新貝憲弘)