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ニューヨーク 魅力攻勢にたじろぐ

2013年12月02日

 静かな笑みをたたえてその人はやってきた。100人以上の報道陣が待ち構えていた会見場が一瞬、シーンとした。

 国連総会の一般討論演説でニューヨーク入りしていたイランのロウハニ大統領は、冒頭に短くあいさつを済ますと、1時間半以上にわたって、世界各国の記者の質問にじっくりと答えた。一度も声を荒らげることなく、淡々と。

 「米国とイランは偉大な2カ国であり・・・」。両国の関係改善に触れた時は、特に米国の記者を驚かせた。終盤で「皆さんの質問に全てお答えしたいのですが、時間がなくて申し訳ない」と述べ席を立つと、会場からは自然と拍手が沸き上がった。不思議な雰囲気だった。

 会見後、米国人の記者いわく、「話を聞きながら、メモを取っていたら、あなたの言っていることはその通りとうなずいていた。いわゆる魅力攻勢にはまるとこだったよ」

 1979年の国交断絶以来、初めての米国大統領との電話会談の様子を短文投稿サイト「ツイッター」上でつぶやいた時は、会談後、満足そうにほほ笑む姿まで公開した。

 米国への敵視発言で知られたイラン前大統領とのあまりの違いに、たじろいだ米国人。魅力攻勢がどう転じるか、あの国も、あの国も注目していることだろう。 (長田弘己)