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ワシントン 商魂に皮肉をこめて

2013年12月17日

 転んでもただでは起きない商魂に乾杯した。米政府機関の一部が閉鎖された10月前半、首都ワシントンの多くの飲食店は連邦政府職員への割引を実施した。身分証明書を提示すれば「前菜一品サービス」「ピザ1つ無料」といった具合だ。

 そのうちの1つのバーに出掛けた。政府職員だけでなく、すべての客を対象にビールやワインを1杯5ドルに値下げ。政府機関を閉鎖に追い込んだ連邦議会議員には「倍額請求する」というジョークにも笑わせてもらった。

 店主男性(54)は「サービスの効果で売り上げが伸びたよ」とにんまり。米首都圏の経済は連邦政府に依存している。政府閉鎖で職員の多くが一時帰休になり、商売上がったりのはずだが、それを商機に変えてしまった。

 オバマ大統領も政府閉鎖中、ホワイトハウスから徒歩で外出し、政府職員は一割引きのサンドイッチ店で昼食を買った。こうしたサービスは「普通の米国人がいかに他人を思いやっているかを示している」とたたえ、店員や客の歓声を浴びた。

 このサンドイッチ、オバマ氏と対立した野党共和党のベイナー下院議長もお気に入りだという。議長の報道担当者が「両氏に共通点はある」とツイートした。米財政をめぐって今後も協議を続ける両氏の共通点が味覚だけではないことを願う。 (竹内洋一)