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パリ 敬意は払われる邦画

2013年12月26日

 初老の女性が、難しげな表情で、手にした2枚のDVDの箱を交互に眺めている。溝口健二監督の「雨月物語」と小津安二郎監督の「東京物語」だ。フランスが誇る映画関連の文化施設「シネマテーク・フランセーズ」のショップには、日本の名画、邦画関連書籍が充実している。

 女性はどちらを買うか迷っているようだ。両方買えばいいのにと思って横目で見ていると、ついに店員を呼んで解説させ始めた。「どちらからみればいいのか」という質問に、店員は「まったくタイプの違う映画だから」と答えている。

 フランスの日本映画に払う敬意には頭が下がるばかりだ。宮崎駿監督が「引退」を発表すると、ルモンド紙が一面で報じた。1月に大島渚監督が亡くなった時は、リベラシオン紙がすぐに見開き2ページを使って、業績や作品、人物像まで幅広く振り返っている。

 カンヌ映画祭が近づけば、メディアは必ず邦画を扱う。東映、日活の任侠(にんきょう)、アクション映画の研究者もいる。名画から大衆映画、最新作まで、視線が幅広いのもフランスの人たちの特徴だろう。

 DVD選びの女性は結局、手ぶらで店を出た。長々と他人に説明させておきながら、買うのをやめたもようだ。心のタフさと厳しい金銭感覚。これもまたフランス人らしさだが…。 (野村悦芳)

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